官僚のなかでも、ほんの一部のトップエリートたちは、入省してからわりと早めに海外に留学し、教養のなさに気づく機会があるが、そのトップエリートたちの少し下あたりにいる官僚たちは質が悪い。あまりの教養のなさに相手があきれて、レベルを落とした話をされているのにも気づかない。もはやこれは悲劇だ。

 そんな官僚を多く輩出しているのは東大法学部だ。文学部仏文科の僕には愛校心などないが、法学部の連中はこぞって愛校心が強い。彼らに、東大卒に教養がないことを指摘すると、

 「自分を除いて教養がない」

 と考える。僕は本の中で法学部を辛辣に批判したが、法学部卒の人が読んでも、「自分以外の話」だから、怒りはしないだろう。

 『東大生はバカになったか』でいちばん言いたかったのは、東大批判ではない。現代の教養とは何であるかということだ。この本を読んでほしいのは、東大卒の人間でもなく、東大生でもない。むしろ、今からでも教養を身につけたいと思う一般社会人にこそ読んでほしい。今はどこの大学に入るかなんて教養に関係ない時代なんだとわかるはずだ。

※週刊朝日2001年11月23日号から再掲

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