それでも元知事流に言えば、こんな懸念もオリンピックが始まってしまえば日本選手のメダルの数に一喜一憂するのが人間……というものなのだろうか。ずいぶん甘く見られたものだ。東京都とIOCの契約書には「猪瀬直樹」のサインが入っている。人の不安や必死を、「愚かしさ」と嘲笑できるような人が持ち込んだ東京五輪ならばなおのこと、ほんとうにいらない、絶対にいらないという気持ちを深めた人は多いのではないだろうか。そんな意見(らしきもの)を、諦めることなく言っていきたいと思う。真夏の炎天下で、ぬるい水を飲ませて無理やり「感動」させるなんて、地獄絵のようであまりに恐ろしいので。
■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表