全国ネットのアンケートでは、子どもの不登校で約92%の家庭が「支出が増えた」と答えるなど、家計への負担が増えていることも明らかになった(photo gettyimages)
全国ネットのアンケートでは、子どもの不登校で約92%の家庭が「支出が増えた」と答えるなど、家計への負担が増えていることも明らかになった(photo gettyimages)

 会で、自傷行為をしたり昼夜逆転の生活を送ったり、部屋から出てこず風呂にしばらく入らないこともあるなど、さまざまな不登校の子どもがいることを知った。肩の力が抜け、不登校を理解できるようになった。

 長男には学校の話題はなるべく避け、家族旅行などにも行ったりした。やがて長男の自傷行為はやみ、自然と笑顔も出るようになった。今は好きなことを見つけ過ごしているという。

 女性は言う。

「つながれば、助けてくれる人はきっといます」

 アンケートを実施した全国ネット共同代表の中村みちよさんは、公的支援の必要性を説く。

「不登校の子の親の孤立を防ぐために、親の会や不登校の子を支えるフリースクールのような場所がありますが、まずそうした居場所があるという情報を親に届けること。そして、子どもが不登校になった親は、仕事をやめざるを得なくなったりして収入が減ります。そうした家庭への経済的支援も必要です」

■社会が変わるには

 岩手県北上市で不登校やひきこもりの当事者や親が集う「ワラタネスクエア」を開設し、オンラインでの「オカンのどんと来い!相談室」を行っている後藤誠子さん(55)は、何より社会が変わる必要があると話す。

「いまだに子どもは学校にいかなければいけないという風潮が根強く、それが親を追い詰めています」

 後藤さんの次男(28)も高校1年の時に不登校になった。その時、周囲の目が気になり、近所のスーパーに行くのも嫌で、少しでも人が少ない遅い時間に行っていた。

 16年に成立した教育機会確保法は、つらい時は学校を休んでもよいとする不登校の子の「休養の必要性」を示している。だが、現場の教師はその趣旨を理解しているとは限らず、児童生徒が不登校になると親に子どもを登校させるよう迫ることがある。学校に行くことを「是」とする風潮が根強くあるため、親は子どもが不登校になると自分を責め、誰にも相談できず、孤独に陥ったりしていくという。

 社会が変わるにはどうすればいいか。後藤さんは言う。

「例えば、地域で普通に挨拶したり声掛けをしたり、不登校の子がいる家庭を支える。それだけでも、親の気持ちは楽になります。地域や社会全体が変わり、子どもが学校に行かなくても認める雰囲気になっていけば、親も子どもも、みんなが生きやすい社会になっていくと思います」

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年12月12日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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