今年も多くの著名人が旅立っていった。西村京太郎さんへ、綾辻行人(作家)さんからの言葉が届いた。
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初めてお会いしたのは1982年、まだ大学生のときでした。僕は小学生のころから推理作家になりたいと思って習作を始めたんですが、京太郎さんは実に多彩な作品を発表されていて眩しい存在でした。中でも<名探偵シリーズ>は、こんな遊び心に満ちたミステリーを書く作家が同時代にいるのか、とワクワクしましたね。硬派の社会派推理もあれば海洋サスペンスもあり、『華麗なる誘拐』のようなスケールの大きな誘拐ものもあり……どの作風もそれぞれに魅力的でした。
78年発表の『寝台特急(ブルートレイン)殺人事件』が大ヒット。以後はもっぱら十津川警部シリーズを書いて、「トラベルミステリーの西村京太郎」になられた。わがままなファンとしては、それ以前のような作品ももっと読みたかったのですが。作家になってから何かのパーティーでお会いした際、「学生時代に講演会でサインをいただいたんです」とお話ししました。あのときは、とてもにこやかに接してくださいました。