冒頭で紹介した女性が暮らす港区の教育委員会は、学校観戦を実施する理由をこう説明する。

「港区としては、やはりまたとない機会なので子どもたちに観戦させたい」

■移動は公共交通機関

 区では車いすバスケットボールのほか、パラ柔道、パラバドミントン、パラ陸上など学校や学年によって異なる競技を各会場で観戦する。参加する児童生徒は幼稚園から中学まで約1万2千人、教職員は約870人。会場への移動は「公共交通機関が原則」だが、会場から半径1キロは封鎖されてバスが使えない。電車での移動になるという。

「ただ、保護者の中にはコロナの感染や熱中症に不安を持つ方もいらっしゃると思います。観戦を休んでも『欠席扱い』とはせず、子どもたちが不利益を被らないようにしたいと考えています」(区教委担当者)

 五輪のソフトボール観戦を予定しているのは神奈川県北部にある清川村。7月下旬、横浜スタジアム(横浜市)に行く。

「世界の一流アスリートのプレーを直接見て肌で感じてもらい、一生心に残る機会としたい」(村教委担当者)

 参加するのは小学5年生~中学3年生で、観戦を希望し、保護者の同意を得た児童生徒69人と教職員41人の計110人だ。

 当日は、感染対策として公共交通機関を使わず、大型バス2台でスタジアム近くまで向かう。場内では188席分を確保し、密になりにくいようにする。早めの水分補給や涼しい服の着用など、熱中症対策にもしっかり取り組むという。

「観戦の前後2週間は体温を測ったり、風邪の症状の有無などを本人及び家族に確認してもらったりしながら、万全の対策を取ります」(同)

「様子見」というのは埼玉県和光市だ。8月下旬、小学6年生約750人が近くの陸上自衛隊朝霞訓練場で開催されるパラ射撃を観戦する。歩いて行ける学校もあり、プレ大会を下見して場内でソーシャルディスタンスを保てることも確認したという。

「ただし、今後の感染状況によってはわかりません。見極めながら7月下旬までには判断したい」(市教委担当者)

 ここに来て相次ぐのが「中止」する自治体だ。

 開催都市の東京では6月22日に文京区と目黒区が、25日には三鷹市が中止を表明。板橋区も24日に中止を決め、28日に保護者に通知した。中止した自治体に共通するのは、子どもたちの「安心安全」が守れないことへの懸念だ。

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