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東京五輪・パラリンピックの「学校観戦」をめぐり、保護者や教員から戸惑いの声が上がる。再び拡大傾向を見せる新型コロナウイルスの感染のほか、猛暑による熱中症も心配だ。AERA 2021年7月12日号から。
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「親としては行かせたくないです。でも、子どもは『行きたい』と言うし。どうすれば……」
東京都港区に住む40代の同僚女性は、小学4年生の息子(10)の東京五輪・パラリンピック観戦に頭を悩ませている。息子が通う小学校では9月上旬、学年単位で都内の競技会場に車いすバスケットボールを見に行くことになっている。気持ち的には観戦させてやりたい。だが、新型コロナウイルス感染拡大の収束も、ワクチン接種も見通しがつかない。しかも息子は病気をしやすい体質だ。
「区の方針で観戦中止を決めてくれればすっきりするのに……。(息子を観戦に行かせるか)ぎりぎりまで迷うと思います」
そうモヤモヤしているという。
大会への児童生徒の観戦計画は「学校連携観戦プログラム」と呼ばれる。競技会場のある自治体や、東日本大震災の被災地を中心に全国の小中学校や高校、特別支援学校などが対象。大会組織委員会によれば、大会延期前の昨年1月時点で、全国で約128万枚(五輪60万枚、パラ68万枚)の申し込みがあった。
■アンケートで反対多数
だが、コロナ禍で状況は一変した。本誌がAERAネットを使い、小中高生の子どもがいる保護者を対象に実施した「子どもの五輪観戦」に関するアンケートでも、「反対」の意見が多数寄せられた。
小学1年生と4年生の子どもが学校観戦に行く予定だという、都内在住の女性(38)は心情を吐露する。
「バスや電車に乗って会場まで行くそうです。普段、決まった人たちにしか会わないのに、なぜわざわざ不特定多数が集まる場所へ行かなければならないのでしょうか。コロナがなくても熱中症などの心配もあります」
子どもの健康を守れるのか。学校観戦は子どもをコロナの感染リスクにさらす「動員」だとして、中止を訴えるデモも起きている。東京都医師会の尾崎治夫会長は6月22日、緊急会見で学校観戦についてこう述べた。
「前回1964年の東京五輪は、10月の季節的にいい時期の開催でした。しかし、今回は夏の蒸し暑い時期の開催で、なおかつ今は暑さに弱い子が多い。しかも、ある程度の集団で移動するので、コロナに感染するかもしれない。そう考えると(学校連携観戦プログラムは)やめたほうがいいと思います」
自治体の対応は分かれている。