モデルナ製のワクチン (c)朝日新聞社
モデルナ製のワクチン (c)朝日新聞社
羽田空港の検疫検査場を視察する菅義偉首相 (c)朝日新聞社
羽田空港の検疫検査場を視察する菅義偉首相 (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの新たな変異株が、世界を席巻している。日本ではインド由来のデルタ株が第5波の引き金になると見られているが、さらに東京五輪開催を機に、南米で感染が拡大中の「ラムダ株」と呼ばれる“最凶変異株”が上陸する恐れがあるのだ。迫る脅威とどう向き合えばいいのか。

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 ラムダ株は南米を起源とする変異株で、ペルーでは4月以降の感染者のおよそ8割を占める。6月30日現在、ペルーの新型コロナ感染症による死者数は世界5位の約19万人(感染者数は約205万人)。人口10万人当たりの死者数で見ると世界最多の583人に上り、“デルタ超え”の脅威が現実味を帯びる。

 チリやアルゼンチンでも感染が急増しているほか、国際データベースのGISAIDによると、米国でもラムダ株検出の報告例が増加しており、今後、感染が急拡大する危険性をはらむ。

 WHO(世界保健機関)は、変異株を「懸念すべき変異株(VOC)」と「注目すべき変異株(VОI)」に分類しているが、6月14日、ラムダ株をVOIに指定。世界各国に警戒を呼びかけているが、今後の感染状況によってVOCへ格上げされることも想定される。

 ラムダ株で懸念されているのは、F490Sという変異がワクチンの効きを悪くするかもしれないことだ。研究者の中には「5分の1程度まで落ちる可能性がある」との指摘もあるが、実際はどうか。防衛医科大学校感染対策室長の藤倉雄二准教授が、「まだ基礎研究段階の知見でしかない」と前置きしつつ解説する。

「ラムダ株ではF490S変異が注目されています。コロナウイルスの突起状のスパイク蛋白質は1200以上のアミノ酸配列でできていますが、このうち490番目のアミノ酸が変化しているのです。著名な英科学誌によると、そこに変異が入るとワクチンの効果を下げ、抗体が効きにくくなるのではないかと書かれています」

 まだ専門家たちの評価や検証を受けていない査読前の論文でも、ワクチン効果の低減に言及する研究が散見されるという。デルタ株は従来のウイルスよりも約2倍感染力が強いとされているが、ラムダ株のF490S変異もヒトの細胞との結合に関わる場所にあるというから、強い感染力を備えていることが心配される。藤倉准教授が続ける。

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