いま、がんの専門家が危惧しているのが、医療機関への検診や受診控えによる、がんの早期発見や診療の遅れだ。感染が怖くて検診に行かなかった、症状があるけど病院に行っていない……。そんな人にこそ読んでほしい、コロナ禍のがん対策。
【前編/不要不急で減ったがん検診に危惧 約2100人が未発見の可能性も】より続く
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コロナ禍でのがん検診や受診。どうすれば安心して受けられるのか。
まず検診について。日本対がん協会など健診8団体は共同で、健診施設での感染防止ガイドラインを作成し、昨年5月に公表している。ガイドラインによると、健診の受診者と健診施設職員はマスクの着用を原則とし、事前に検温や体調確認を行う。換気は1時間に2回以上。1日の予約者数を調整して、密集を避けるなどの対策を講じる。
続いては、がんかもしれない症状があるとき。大分大学医学部呼吸器・乳腺外科学講座教授の杉尾賢二医師が肺がんの例について話す。
「特徴的な症状は血痰と、場所がはっきりしている胸の痛みですが、咳や呼吸困難など、コロナと似た症状が表れることもあります。今はまずはPCR検査をして、陽性であればコロナの治療を行い、陰性であればがんの診察・検査を受ける流れになってきています」
胃がんではみぞおちの不快感などの症状や胸やけ、大腸がんでは血便や下血、乳がんでは胸のしこり、子宮頸がんでは不正出血など、それぞれ特徴的な自覚症状が表れる。心当たりがあったら迷わず医療機関を受診することが必要だ。
その上で、もしがんと診断されたら、どういう治療になるのか。基本的にがんは治療の優先順位が高いので、診療が後回しにされることはない。
去年のある時期、がんの手術や放射線治療で免疫力が下がるというウワサが流れた。杉尾医師は、「そんなことはない」と否定する。唯一、可能性があるのは一部の抗がん剤だが、免疫力の低下によるコロナ感染を懸念して、抗がん剤の種類や治療法を変えることはないそうだ。感染対策を万全にするという要素は加わったものの、「現時点で最もそのがんに有効な治療を行う」のは、コロナ前と何ら変わらない。