「手術は、手術室での感染を予防するため、今は多くの医療機関で術前に必ずPCR検査や抗体検査を行っています。また、重症のコロナ患者の治療でICU(集中治療室)が使われていますが、今は主ながんの手術後にICUが必要になるケースはほとんどありません。その辺も心配しないで大丈夫です」(杉尾医師)
では、あらかたの治療を終えて、経過観察中の場合はどうか。静岡がんセンター病院長の上坂克彦医師は「がん治療が一段落していて経過観察の状態であれば、主治医と相談の上、受診間隔を空けることも可能」と説明する。同センターにはそういう問い合わせが来るが、患者の希望に沿って臨機応変に対応している。
コロナ診療を行う医療機関でのがん治療に不安を持つ人もいるかもしれない。だが、がん治療中にコロナに感染する可能性はゼロではない。その点、コロナにも対応し、十分な感染対策を行っている医療機関でがん診療を受けることは安心、といった考え方もできる。
例えば、国立がん研究センター中央病院は東京都の要請もあり、昨年4月から新型コロナ患者を受け入れている。コロナ診療のために感染症の専門家を中心にチームを立ち上げ、1病棟25床をコロナ専用にした。これまで軽症から中等症のコロナ患者を400人ほど診ているが、そこにはコロナに感染したがん患者も含まれる。
「がん患者さんがPCR検査で陽性と判明した場合、専用病棟に入院してコロナ治療を行い、陰性になった段階でがん治療を始めます。コロナ感染に気付かず診療を行うことは危険で、この場合、診療が遅れてもやむを得ません」(国立がん研究センター中央病院長の島田和明医師)
そもそも、がんになるとコロナにかかりやすいのだろうか。これに関して新しい知見が出ている。
国立がん研究センターが6月に発表した研究で、中央病院にかかっているがん患者約500人と、がんにかかっていない人(同センター職員)約1千人の血液を調べ、新型コロナの抗体を持っている人の割合を比べた。