
■安全面で根強い懸念
マスク氏の買収後、ロシアによるウクライナ侵攻で偽情報対応の最前線に立ったツイッターの安全対策のトップなど、サービスの安全面を支えた社員が相次いで退職した。マスク氏は11月23日、買収前よりヘイトスピーチの露出が減ったと投稿したが、安全面での懸念は根強い。
「言論の自由の絶対主義者たちは、投稿の管理は『敵』だと間違えた認識をしている。投稿の管理をより増やしたほうが、より企業としての利益は増える」。米ニューヨーク大教授のスコット・ギャロウェイ氏は11月、自身のポッドキャストでそう話した。
宇宙ベンチャー「スペースX」やテスラなど、世間から「到底無理だ」と言われた難問に突き進み、「世界一の富豪」にまで上り詰めたマスク氏。稀有な起業家であるマスク氏は、足元の混乱をはね返し、理想的な「公共の広場」を生み出せるのか。その行く末は、「ツイッター大国」とされる日本のネット空間のありようも大きく左右する。(朝日新聞サンフランシスコ支局長・五十嵐大介)
※AERA 2022年12月12日号より抜粋