逆に不便な場所ながら、四国で唯一20位以内にランキング入りしたのは清流で知られる四万十川河口の高台に位置する高知県の「山みず木」だ。運営するのは、前出の「中滝アートヴィレッジ」の藤本さん夫妻だ。

「ここは80年代のバブル最盛期に開発を始め、完成しないまま十数年前に廃業した温泉保養施設がルーツ。総面積は約5万坪あり、10年前に借り受けて少しずつカフェや多目的ホール、ギャラリーなどを併設した複合施設へと再生させました」

 グランピングは大型テントが12張り。他に宿泊棟やキャンプサイトもある。人気は眼下に見下ろす四万十川と雄大な太平洋、そして雲や星が織りなす自然の美しさだ。

 また、地下800メートルから湧き出る掛け流し鉱泉も好評。有馬温泉に並ぶほど鉄分を多く含んでおり、神経痛や慢性婦人病、高血圧など幅広い効能がある。

「運営の基本は、中滝と同じく自然との共存。敷地内のオーガニックファームで収穫する旬の野菜をはじめ、大地と海の恵みを大切にしたい」(藤本さん)

 静岡県伊東市の「グランピング 伊豆シャボテンヴィレッジ」は、直径6メートルの大型ドームテントに、バスルームとトイレを連結した利便性の高さで人気上昇中。

「『優雅なはずのグランピングなのに、トイレやお風呂がテントの外で、しかも共用なのはいかがなものか?』という素朴な疑問からスタートし、設計の段階から機能性、利便性を追求しました。『密を避け、プライバシーも守れる』のがお客様に高く評価され、リピーターが多いですね」(広報担当者)

 週末は全18張りがほぼ満室。こちらもドッグランを併設しており、平均稼働率は8割近いという。

「お客様のお目当ては伊豆ならではのいきが良い海の幸のバーベキュー。7月は特産のキンメダイが旬です。地元産の野菜やお肉も『味が濃い』と評判で、天然温泉の露天風呂もございます」(同)

 新型コロナ禍だからこそのビジネスチャンス。生かさない手はない。(高鍬真之)

週刊朝日  2021年7月16日号

▼▼▼AERA最新号はこちら▼▼▼