飯村:日本の感染者は米英やブラジルなどと比べて低く抑えられていると言われてきましたが、ワクチンなどの状況は完全に周回遅れです。そんな危険なところにアスリートを送っていいのかと態度を変える国もあるかもしれません。
──多くの専門家や世論が懸念の声を上げる中で、なぜ「強行開催」の流れは止まらなかったのでしょうか。
上野:安倍政権が1年延期を決めたときから政局がらみです。今年の秋までに総選挙がある。日本人はお祭り騒ぎが好きだから、五輪をやってそのまま総選挙になだれ込めば勝てるだろう。そんな思惑が透けて見えました。でも、去年と比べて環境条件が変わっています。ワクチン接種率が上がらず変異株も次々に出てくる中でも突っ込もうというのは、「特攻」と一緒です。
飯村:楽観的に見ていたんでしょう。五輪はそもそも堕落していたと思うけれど、それでも巨額の金が動き、政治的にもメリットがある。菅さんは政権に就いたとき、新しい首相として五輪をやめるというオプションもあったはずです。しかし、1年経てば大丈夫だろうと楽観的に構えて後に引けなくなりました。
(構成/編集部・川口穣)
※AERA 2021年7月19日号より抜粋