「これからも『ノー』の声を上げていきたいと思っています」

 怒りと憤り。改正案に反対の声を上げたZ世代に共通するのは、この思いだ。

■人権排除の社会に声

 グローバル化する世界で、Z世代は、外国人は遠い存在ではなく自分たちと同じ存在という感覚を当たり前のように持ってきた。だから、人と人の間に線を引き、向こう側にいる人の人権を排除する社会に声を上げた。

「命さえ奪われてしまうひどいことが、私が生活している日本で起きています。そこから目を背けてはいけないと思っています」

 そう話すのは、愛知県立大学3年の千種(ちくさ)朋恵さん(20)。亡くなったウィシュマさんが収容されていた、名古屋入管への面会活動などを続ける。

 入管問題に目が向いたのは大学1年生のとき。東海地方を中心に活動する市民団体「外国人労働者・難民と共に歩む会(START)」が大学内で企画した「難民の話を聞く会」に参加した。それまで入管のことは何も知らなかった。だが、収容者の処遇はひどく、施設外の病院に連れていかれるときは手錠と腰縄を付けられるなどと聞き、憤りを覚えた。

「日本社会にこんな問題があったのかと思って」

 STARTに加わり、本部運営委員として活動する。

 週に1、2回、名古屋入管で仲間と一緒に収容者と面会を重ねる。ウィシュマさんが亡くなった後も、収容された人の環境は変わらない。1年以上収容され、精神を病んで寝たきりの状態で、「死にそう」と訴える収容者もいるという。

■外国人の問題ではない

 入管問題は外国人の問題として捉えるのではなく、日本社会で起きている問題として捉えなければいけない、と力を込める。

 入管問題に取り組む中で、日本人にも搾取され抑圧される人たちがいると知った。コロナ禍で感染のリスクがありながら、労働に見合った給与をもらえないでいる人たちのことだ。理不尽な差別を受けているという点では、入管の問題とつながっていると感じると話す。

 卒業後の進路は決めていない。だが、どんな仕事に就いても、差別され、抑圧される人の立場に立った活動をしたいという。

「少しでも自分が力になれることをやりたい。誰もが安心して生きられる、差別のない社会にしたい。それが私の望みです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2021年7月19日号

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