厚労省は検討会で、「大麻事犯が増加し、特に若年層における大麻乱用が拡大している」などと説明。30歳未満の大麻事犯の検挙人数などが「過去最多」であるデータなどを示した。だがこれは「実際に若年者層の使用者が以前より増えているという科学的なエビデンスとは無関係」と丸山教授は切り捨てる。

「若者の大麻使用摘発に捜査を集中させた結果の反映にすぎません。危険ドラッグに捜査を集中していたときは大麻の検挙人数は減っていました」

 若者に大麻がまん延しているという危機感を強調することが、使用罪創設に世論を導くのに好都合だと厚労省が判断したのであれば、「安易というだけでは済まされない」と丸山教授は嘆く。

「人権問題として扱っていく国際的な流れに反し、いまだに大麻使用で未成年も犯罪者として扱う人権意識の低い国だと世界に発信しているようなものです」

■米国は大麻販売に課税でコロナの財政難をカバー

 国連麻薬委員会(CND)は昨年12月、薬物を規制する「麻薬に関する単一条約」で「特に危険で医療用途がない物質」というカテゴリーから大麻を削除する勧告を可決した。医療用大麻の有用性を認めた世界保健機関(WHO)の勧告を受けての措置だ。採決は賛成27、反対25、棄権1。欧米諸国の多くが賛成するなか、日本はロシアや中国、中東諸国などとともに反対に回った。「大麻の規制が緩和されたとの誤解を招き、乱用を助長するおそれがある」というのがその理由だ。

 とはいえ、日本も医療用のニーズは否定していない。今回の厚労省の検討会報告書にも、大麻草を原料にした医薬品の使用を認める方針を盛り込んだ。一方で厚労省は審議の中で「嗜好(しこう)用は積極的に解禁されているという状況では全くない」と国際的な流れは全面解禁ではない、とクギを刺している。だが、嗜好用も含め「大麻合法化」の動きが顕著な国がある。米国だ。

 首都ワシントンと15州が嗜好品としての大麻使用を合法化。このうち4州は、昨年11月の大統領選時の住民投票で新たに合法化が決まった。

 背景には、新型コロナウイルス感染拡大によるストレスなどで嗜好用大麻の需要が高まるなか、大麻販売に課税することでコロナ対策に伴う財政難をカバーしたい、との各州の思惑がある。例えばニューヨーク州は、21歳以上の使用や所持、栽培を合法化することで年間3億5千万ドル(約384億円)の税収と最大6万人の雇用を見込む。

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