戦前から白旗を掲げるほど上位国との差がないが、逆に、チリ(37位)の評価は低すぎる。GKのクリスチャン・エンドラーを中心に、粘り強い守備から勝機を探る。先月の試合では、FIFA女子ランキング2位のドイツと0対0で引き分けている(ドイツは4日前のフランス戦から大幅にメンバーを変えてはいたが)。ランキング下位の新鋭が世界大会に出てくるには、何らかのポジティブな要素があり、「確実な勝ち点3」など、そうは落ちていない。
ノックアウトラウンドの組み合わせは神のみぞ知るというところ。優勝候補の最右翼であるアメリカは、合い口の悪いスウェーデンと初戦を戦うなど、厳しいG組に入った。1位抜けできる保証はない。2011年大会から主力を務めてきた選手も多く、経験値が頼りになる半面、過酷な日程の中でコンディションへの懸念は残る。これは、マルタらに頼るところが大きいF組のブラジルにも言えることだ。
オランダとスウェーデンの欧州両国は、フランス大会の欧州勢躍進が世界的潮流か、ホームアドバンテージによるものかを示す大会にもなる。筆者個人としては、女子ワールドカップで敗れたオランダと再戦し、なでしこジャパンの成長を感じたい気持ちはある。
大会が進むにつれて、暑さは厳しくなっていくだろうが、これは日本にとって有利に運ぶはず。今年の上半期をドイツでプレーしていた田中美南(INAC神戸レオネッサ)は「日本に戻ってきた時には、湿度の高さに慣れない部分も感じました。他の国の選手よりも慣れている日本の選手のほうが有利だと思います」。
菅澤優衣香(三菱重工浦和レッズレディース)へ暑さについて尋ねると「自分自身、暑さには弱い部分がある」と苦笑い。その暑さに弱いはずの菅澤は、赤道にほど近いインドネシアで行われた2018年夏のアジア大会で、準決勝、決勝とゴールを連発している。苦手のレベルが他国とは違うのだ。
ほとんどの選手が「日本の夏のピーク」を知らない他チームに比べて、心理的にも有利。登録人数や1試合あたりの交代人数がこれまでより拡大されたが、それでも、なおアドバンテージは残る。
そうした地の利がある上に、オリンピック優勝経験国のドイツ(2位)やノルウェー(13位)、力のあるフランス(3位)などが参加していない(女子ワールドカップ早期敗退のため)。世界大会で決勝進出を3回、優勝を1回経験している国が、対外試合6連勝中で迎える自国開催だ。これだけ条件が揃っているのに「ベスト4進出」を目標に掲げても仕方ないだろう。
目指すは、金メダルだ。(文・西森彰)