AERA 2021年7月19日号より
AERA 2021年7月19日号より
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)/順天堂大学医学部教授、スポーツ庁参与。『自律神経にいいこと超大全』など著書多数(本人提供)
小林弘幸(こばやし・ひろゆき)/順天堂大学医学部教授、スポーツ庁参与。『自律神経にいいこと超大全』など著書多数(本人提供)

 ストレスで崩れがちな自律神経のバランスを整えれば、様々な不調改善や免疫の向上も期待できる。整えるためには日々、どのようなことに気を付ければいいのか。AERA 2021年7月19日号は、専門家に聞いた。

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「これをどうぞ」と、順天堂大学医学部教授の小林弘幸さんが見せてくれたのが、スマートフォンの画面。揺れる水面(みなも)、目に鮮やかな新緑、美しく咲き乱れる花々……。聞くと、昨年の6月からインスタグラムを始めたと言う。コロナで蓄積しがちなストレスも、写真を撮ろうと周囲を見渡しながら歩くと、解消されていく。

「ストレスは、自律神経のバランスを乱す最大の敵です」

 そう話す小林さんによれば、自律神経のバランスが良ければ、免疫の中心的役割を担う白血球のバランスも良くなり、コロナをはじめとする感染症への抵抗力が高くなる。小林さんに特に実践すべき「自律神経を整える5カ条」を挙げてもらった。鍵は、「食事」と「呼吸」だそうだ。

 食事は、体にとって必要な栄養素を摂取するのに加え、交感神経と副交感神経の切り替えをスムーズに行うスイッチの役割としても大事。夜寝ている時は、自律神経のうち副交感神経が優位に働いている。朝起きて食べ物が胃に入ると、腸が刺激されて蠕動(ぜんどう)運動が活発になり、自律神経が交感神経優位へと切り替わる。朝食をほとんど取らない生活だった人も、バナナ1本でもいいので、何か口に入れる。

「ベースラインとしては、あくまで『おいしく』。朝食がストレスにならないよう、自分がおいしいと思うものを、楽しんで、ゆっくり食べるようにしてください」

■セロトニン低下で不調

 自律神経を整えるための朝の習慣としては、「朝日をしっかり浴びる」「起き抜けに水を1杯飲む」も有効。人間の体温やホルモン分泌などを調整している「体内時計」は25時間周期で動いており、地球の1日の24時間とズレがある。太陽の光がこのズレを調整する。

 そして「1杯の水」は、胃腸の神経を刺激し、副交感神経の「低下しすぎ」を抑えられる。朝は、副交感神経優位から交感神経優位へと切り替わる時間帯ではあるが、副交感神経が低下しすぎるとイライラの原因に。

 交感神経は日中にかけて活発になっていき、夕方からは少しずつ低下。副交感神経が優位になっていく。「夕食を早めに」というのは、夕食時間が遅いと、胃腸に物が入った状態で就寝となり、消化吸収のために内臓が働き続けて、交感神経優位の状態が続くからだ。副交感神経優位に切り替わらなければ、睡眠の質も下がる。

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