AERA 2021年7月26日号より
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 東京五輪は「多様性と調和」を理念に掲げ、参加する女子選手の数は史上最多となる。しかし、五輪のモットーが真のジェンダー平等実現の障害になっている。AERA 2021年7月26日号は「五輪」特集。

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 日本選手団主将で陸上男子の山縣亮太(29)と副主将で卓球女子の石川佳純(28)が7月23日の東京五輪開会式で、選手宣誓をする。過去に国内で開催された五輪3大会では、いずれも男子選手が大役を担ってきた。今大会は「ジェンダー平等の推進」という観点から男女そろってする。各国・地域選手団の旗手も男女各1人が共同で務める。

 大会を重ねるごとに増えてきた女子選手の割合も、史上最多の48.8%になる予定だ。女子選手数も過去最多になる。男女混合種目の数は18で、2016年リオデジャネイロ五輪の2倍に増えた。バレーボールなど五つの団体球技で、女子、男子の順に実施していた決勝の順番を入れ替える。国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は言う。

「ジェンダーバランスが取れた史上初めての五輪になる」

 本当にそうなのか。

■女子競技は品位下げる

 そもそも五輪は女性を排除して始まった。「近代五輪の父」と呼ばれたクーベルタン男爵が「女子競技は五輪の品位を下げる」と反対し、1896年の第1回アテネ大会は男性のみで開催。1900年の第2回パリ大会で門戸が開かれ、2012年ロンドン五輪でやっと女子選手の全競技参加が実現した。

 だが、宗教上の理由などでイスラム圏の女子選手の参加はまだ少ない。一方、アーティスティックスイミングと新体操に男子選手は出場できない。

 スポーツとジェンダー研究を専門とする城西大学の山口理恵子教授は指摘する。

「五輪は『より速く、より高く、より強く』をモットーに掲げ、男性性に価値を置いています。女性参加が増えるのはうれしい半面、そうしたスポーツ文化の下で女性スポーツはこれまで男性のミニチュア版と考えられてきたし、今でもその傾向はある」

 実際、アスリートの男女の待遇差は深刻だ。米メディア「Sportico」が5月に発表した今年のスポーツ選手長者番付で、100位内に入った女子選手はテニスの大坂なおみ(15位)とセリーナ・ウィリアムズ(44位)=米国=の2人だけだった。大会の賞金総額に差がある場合も少なくなく、サッカーでは男子の18年ワールドカップ(W杯)が4億ドル(約440億円)に上った一方で、女子の19年W杯は3千万ドル(約33億円)にとどまった。その差は10倍以上だ。

 こうした問題が生じるのは、スポーツ組織の幹部や指導者に女性が少ないことも大きな要因だ。日本の場合、笹川スポーツ財団の昨年の調査によると、各競技団体の女性役員比率は15.5%だった。しかも回答のあった78団体中9団体(11.5%)で女性役員が一人もいなかった。東京五輪・パラリンピック組織委員会も、森喜朗前会長の「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかる」発言後にやっと女性理事の割合を40%台に引き上げた。(編集部・深澤友紀)

AERA 2021年7月26日号より抜粋