コロナ禍で迎える東京五輪。菅政権は「安全・安心な大会」を強調する。その根拠とするのが新型コロナウイルスの感染防止対策「バブル方式」。だが、そのバブルは穴だらけ。とても機能していないのが実情だ。AERA 2021年7月26日号の記事を紹介する。
【表】感染予防の「バブル方式」にあちこちで穴が見つかっている
* * *
そもそも、そんなことが可能だとは大会関係者をはじめ、誰も思っていないのではないか。
23日に開幕する東京五輪。政権が安全安心な大会を実現するための根拠とする「バブル方式」のことだ。開催地を大きな泡で包みこむように囲い、選手やコーチら関係者を隔離する。外部の人たちとの接触を断って新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ。サッカーやバスケットボールなどの国際大会で導入実績がある防疫措置だが、相次いで「穴」が見つかっている。
■入国ラッシュで「密」
いま、羽田や成田空港では、選手団やスポンサー、大会関係者や要人らの入国ラッシュが続いている。島国日本にとって感染者の入国を阻止する「水際対策」の本丸だが、現実はのっけからバブルが崩壊している。
13日も成田空港には続々と選手団が到着していた。先導するのは「TOKYO 2020 STAFF」と書かれたビブスを身につけた「リエゾン」と呼ばれるスタッフたち。大規模ワクチン接種会場の受け付けや誘導を請け負う大手旅行会社から招請された添乗員だ。個別取材は受けない決まりだが、あまりにもずさんな仕組みに、リエゾンに応募した男性が答えた。
「多い日には数千人単位が入国するのです。動線といってもひとつの選手団にアテンドは2人程度しかいません。検疫、入国審査までは一般人との接触はありませんが、荷物を受け取るレーン、税関審査、到着ゲート付近では、どうやっても一般人と『密』な状態になってしまいます。完全な形で誘導すると言っても、その他の人との接触を完全に防ぐことは不可能です」
厄介なのが選手団以外の関係者だ。検疫や入国手続きは同じ飛行機の一般人とは時間差で行うことになっているが、そもそも誰が「関係者」なのか把握できないケースがある。要人に至っては外交儀礼上、検疫も入国審査もスルーだ。事前に提出された名簿と実際に空港に到着した人数が異なる場合もある。別便で入国して、先に到着した選手団や関係者に公共交通機関を使って合流することも可能だ。