「人間が丸ごと2人とか3人、4人いて何も起きないわけがないですよね。私も息子に満足な家庭環境を与えられたかは懐疑的です。大学院まで行くように方向性を決めてしまったこと、彼の思春期に性的な小説を書いたこと、夫と別居したことも含めて、自分が死ぬ前にあやまりたいんですよ」
読み進むうち「親を許せるか」というテーマを突きつけられる。許せなくていいと窪さんは言う。
「だって人間はそんなに簡単に分かり合えない。自分を産んだ母親だから分かってくれるはずと思っても、大体期待外れに終わる。自分の価値観で許す、許さないを判断するのは、自分が上に立って相手を下に見ているということ。許すって何だろうと今も考え中です」
題名の「朔」は新月を表す。真っ暗な夜から、だんだん月が明るくなって満月が輝くという意味が込められている。(仲宇佐ゆり)
※週刊朝日 2021年7月30日号