「介護が必要になる人を減らしたいという思いから、平成30(2018)年度からフレイル予防に力を入れています。国民健康・栄養調査では、兵庫県は女性の痩せが比較的多いという結果が出ています。その一方、40歳以上の大腿骨近位部(足の付け根)骨折は、女性が全国ワースト1位、男性が5位。『痩せなあかん』と語るお年寄りが多いんですけど、それは誤認識だとわかってほしい。当時はフレイルという言葉は浸透していませんでしたが、メタボは浸透していました。できるだけインパクト強く伝えたくて、『シニアはメタボよりフレイル対策』と打ち出しました」
同県はポスター、冊子やYouTube「ひょうごチャンネル」などで啓蒙を続けている。今年3月にはオリジナルの「ひょうごフレイル予防かるた」も作った。読み札には<やせないで ぽっちゃりぐらいが ちょうどいい><そしょくは ろうかを はやめるよ><おべんとう くらべてきづく えいようぶそく>といった言葉が並ぶ。
しっかり食べることが大事な理由とは何か。日本健康食育協会代表理事の柏原ゆきよさんは、こう説明する。
「食事は一番の体力の素。高齢の方は痩せるよりも、体力を落とさないことのほうが重要です。体力が落ちると疲れやすく、少し動いただけでだるくなります。動きが減ると食欲も落ち、どんどん悪循環に陥るんです」
今回、取材に協力してくれた3人が口をそろえて主張するのが、なるべく硬いものも食べるようにしたいということ。よく噛むことで、顎の筋肉が鍛えられるうえ、脳に刺激が与えられ活性化にもつながるという。
食べるにあたっては、栄養のバランスを取るのが理想。また、肉を敬遠する高齢者が多いが、しっかり食べる必要がある。近年、「高齢者こそ肉を食え」という考えが広まりつつある。前出の西田医師も、肉を食べてほしいと訴える。
「90歳を超えても肉をガツガツ食う人は、元気です。人は年齢とともに、筋肉の細胞もどんどん減っていき、少し動かないだけで筋肉が落ちるんですね。年をとったからこそ、筋肉をしっかり機能させて維持しないといけません。そのために必要なのがタンパク質。70歳以上でも、男性なら1日60グラム、女性でも50グラムはとってほしいです」