大野は、リオ大会後に天理大大学院で大外刈りをテーマに修士論文を書いた。その結果わかったことは、自らの柔道スタイルは、日本に古くからある形に近いものだったとインタビューで答えている。大野が目指す「古き良き柔道」とは何か。前出の竹園記者は言う。

「大野は、手首とひじを柔らかく使い相手を崩すことで、どんな体重の相手でも一本勝ちできる柔道を目指しています。そのため、稽古では自分より体重の重い選手とも乱取りをします。大外刈りでは仕掛けた後に、軸足となる左足をもう一歩から半歩、相手側に踏み込むこともある。こうすることで体格の大きな相手にも技の威力がたくさん伝わる。組み手、崩しの甘い選手なら相手から反撃されるリスクがありますが、大野だからこそできる技です」

 圧倒的な強さの秘訣(ひけつ)は、守りにもあった。かつて大野は、SNSで強さの理由を聞かれた時に「練習ではなく稽古をしているから」と答えたことがある。「令和の姿三四郎」が、新しい時代の柔道を切り拓く。

(本誌・西岡千史)

*週刊朝日2021年8月6日増大号に加筆

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