東京五輪日本代表で「最も金メダルに近い男」と言われた柔道男子73キロ級の大野将平(29)が、前回のリオ大会に続き五輪2連覇を達成した。26日の決勝でラシャ・シャフダトゥアシビリ(ジョージア)に勝利した。柔道男子の五輪連覇は、斉藤仁、野村忠宏、内柴正人に続いて4人目の快挙。試合後には会場となった日本武道館の天井を見上げ、静かに勝利の余韻に浸った。
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試合後のインタビューでは「リオデジャネイロ五輪を終えてからの苦しくてつらい日々を凝縮したような、そんな1日の戦いでした」と切り出した。「自分の中でほんとに悲観的な思いしかなくて、不安でいっぱいの日々を昨年からずっと過ごしてきましたが、この1日で報われたとは思っていませんし、私の柔道人生はこれからも続いていくので、今後も自分を倒すけいこというのを継続していきたいです」と述べ、「(五輪の開催について)賛否両論あることは理解しています。ですが我々アスリートの姿を見て、何か心が動く瞬間があれば、本当に光栄に思います」と語った。
大野自身が振り返ったように、2連覇までの道のりは決して順調ではなかった。リオ大会後の休養明けとなった2017年12月のグランドスラム(GS)東京では、故障のため3回戦を棄権。翌年4月の全日本選抜では、階級を上げてきた海老沼匡に敗れた。
海老沼は、吉田秀彦ら名選手を生んだ柔道私塾「講堂学舎」の先輩にあたる。このとき、大野は「海老沼先輩に土をつけていただき、逆に気が引き締まる」と話した。
その言葉はうそではなかった。19年世界選手権では6試合すべてを一本勝ち。20年2月のGSデュッセルドルフ大会でも、6試合中5試合が一本勝ちの圧勝だった。
大野の強さの源はどこにあるのか。長く柔道の取材を続けてきた朝日新聞スポーツ部の竹園隆浩記者は、こう話す。
「同じ階級の対戦相手だと、日本人は外国人に比べて手足が短く、筋肉量が少ない。だから組んだときに力負けしてしまうことが多い。ところが、大野は体幹が強く、下半身がしっかりしている。柔道の基本である『相手に寄りかからずにまっすぐ立つ』ということが、どんな相手にも自分の力でできます。世界レベルでこんな組み手ができる男子は、今の日本代表選手にはいません」