体操ニッポンの新世代が躍動した。東京五輪・体操個人総合で、橋本大輝(19、順天堂大)が金メダルを獲得。ロンドン、リオ五輪の内村航平(32、ジョイカル)に続く、日本にとって3大会連続での個人総合金メダルとなった。
試合は序盤から接戦となった。冒頭のゆか、あん馬で完璧ともいえる演技を披露した橋本はトップに躍り出るが、続くつり輪の演技では点数が伸びず、跳馬ではラインオーバーのミス。4位まで順位を落とすが、1位から4位までが約0.4点差にひしめく混戦模様だった。そして橋本は、後半2種目で圧巻の演技を見せる。平行棒では一つ一つの技を正確に決め、15.300の高得点。トップと0.467点差で迎えた最終種目・鉄棒では、得意のダイナミックな離れ技を次々と披露する。その圧巻の演技に、点数が出る前にもかかわらず会場はメダルを確信するかのような熱気に沸いた。鉄棒でも14.933の高得点をマークし、総合得点88.465で、橋本は初五輪にして金メダルを獲得。ともに個人総合に出場していた北園丈琉(18、徳洲会体操クラブ)も、故障がある中の初五輪で5位と健闘した。
団体、個人総合でともに光ったのは、橋本、北園ら若い選手の活躍だ。特に橋本の初五輪で団体・個人総合でメダルという記録は、かつての内村と符合する。内村は08年、初五輪となった北京五輪に橋本と同じ19歳で出場し、団体・個人総合で銀メダルを獲得。まだ決して有名とは言えない中で実績を上げた点も似ている。金メダルを獲得している分、橋本は内村を超える華々しい五輪デビューとなった。一方で当の内村は今回、種目別鉄棒で予選落ちという衝撃の結末を迎えた。世代交代という言葉が浮かぶが、それを最も実感しているのは内村自身かもしれない。
種目別鉄棒で予選落ちした24日。演技後にインタビューを受けた内村は、いつになく冗舌に見えた。開口一番に語ったのは、種目別代表を争った米倉英信への謝罪。「米倉に土下座して謝りたいですね。本当にそんな気持ちです」。その後も率直すぎる言葉が続いた。「僕はもう主役じゃないので」「僕の体操人生のオリンピックっていう項目に、東京って入っていなかったんじゃないかなって思いますね。たぶんリオまでだったのかな」「主役が張れない状態で東京に出てもやっぱり違うんだろうなと」「これからの体操界を引っ張っていく存在ってもう今日(団体予選)で生まれていると思うので、お役御免って感じですね」。
常に強気な言葉とそれに伴ったパフォーマンスで日本体操界をけん引してきた内村。それだけに、結果を出せなかった自身に向ける言葉も辛辣だった。