いや、愛は何度も行き先聞いてたからね。お前が人の話スルーしたんだからね。なんだ、その態度。太れ、もう一度太れ。
ツンに対して適量のデレが配合されないと、ただ腹が立つという事案。ツンデレ配分は繊細だ。
そして本作は、韓国のヒットドラマのリメイク版。さらっと韓国版も見てみたけれど、総じてコメディー部分のパンチが効いている。例えば、のちにヒロインに好意を抱く同僚との出会いの場面。
日本版は、さわやかイケメン・樋口(赤楚衛二)の服のボタンに、愛の髪がからまって……という少女漫画的場面。韓国版は、同僚(マッチョ系)とぶつかったヒロインがドーッと地面に顔面激突。
目の前に転がる白いカケラ。やばい、前歯を折った? と思いきや、それは同僚が落としたガム(クロレッツみたいな)。彼は拾ったガムを豪快な笑顔でかみしめる。
なんかね、もはや新鮮でした。不二夫(赤塚)的なパンチのあるシークエンス。ツンデレやキュンもいいけど、日本版にも「シェー!」がほしい。
カトリーヌあやこ/漫画家&TVウォッチャー。「週刊ザテレビジョン」でイラストコラム「すちゃらかTV!」を連載中。著書にフィギュアスケートルポ漫画「フィギュアおばかさん」(新書館)など
※週刊朝日 2021年8月6日号