東京五輪のサッカー男子日本対フランス戦は、4―0で日本が勝ち、準々決勝に駒を進めた。2大会ぶりのベスト8をかけた注目の戦い。会場となった横浜市の横浜国際総合競技場(日産スタジアム)周辺は本当なら多くの人でにぎわうはずだったが、無観客試合で閑散としていた。28日、試合前後の横浜を歩いた。
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午後10時頃、薄暗い日産スタジアムの外には、階段に座り、応援する人影がまばらにあった。スタジアムの表と裏では総勢30人くらいの人たちが、中から聞こえてくる音だけで「観戦」していた。
日本代表がゴールを決めると、「ジャパンゴール!」という興奮気味のアナウンスが会場の外まで響いてきた。誰がゴールを決めたのかは全くわからない。音を聞きながら、みなスマートフォンで試合の様子を確認するのだ。
頑丈そうな鉄のゲートの前のコンクリートの階段に座っていた、男性1人、女性2人の3人組に話しかけた。20代の女性は、ゴールと同時に全身で歓喜のダンスを踊っていた。
「今、前田大然がゴールを決めたんです。3人とも近所に住んでいて、きょうは散歩がてらに来ました」
試合の前半から来ていたという男女はこう話す。
「会社の同期でたまたま家が近いので2人で来ました。ここにいると、アナウンスとかが聞こえるし、みんなバラバラで観戦しているんだけど、やっぱり人と共有している感がある」
暗闇に目をこらすと、一人でやって来て記念写真だけ撮って帰って行く人、サッカーのユニフォームを着ているカップル、子どもを連れてきて建物だけ見せている親子など、滞在時間は人それぞれだ。
神奈川県内から来たという男子大学生4人組は、ドライブがてらに立ち寄ったという。
「聞こえて来るのはアナウンスとホイッスルの音だけです。これで選手の声が聞こえてくればいいけど、さすがに聞こえないですね」
高校1年生の2人組は、自転車で来たという。
「一生に一回だからきょうは来ました。生の観戦はできないにしても、雰囲気だけは味わいたくて。特別な時間でした」