松井千士 (c)朝日新聞社
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 東京オリンピック競技大会のラグビー競技で、男子の日本は参加12カ国中11位に終わった。リオデジャネイロ大会での4位という成績を超えてメダルを獲るというのは、チームが公言してきた目標だ。となれば、予選ラウンドを3戦全敗で終え、メダルを争う決勝ラウンドに進むことすらできなかった結果は、期待を大きく裏切るものだった。

 5年前、日本は予選ラウンドの初戦でニュージーランドを破って勢いに乗り、メダルを争える決勝ラウンドに進んだ。今回の初戦の相手も五輪連覇を狙うフィジー。ベストコンディションで臨み、スロースターターの強豪の足下をすくう大チャンスだった。

 実際、フィジーの動きは寝起きのように鈍かった。誰もがカギを握ると考えていたキックオフで日本は完敗したものの、試合終盤まで19-24と1トライとゴール成功で逆転できる5点差でくらいつく。そして、終了直前、相手のシンビン(一時的退出処分)で1人多い状態でペナルティーキックを得た。日本はタッチに蹴り出してラインアウトからの攻撃を選択した。

 タッチライン際のラインアウトに相手防御を集めれば、オープン攻撃のスペースで数的有利を生かすことができる。利にかなった判断だった。リオのニュージーランド戦でも、ラインアウトからのサインプレーで貴重なトライを奪っている。

 しかし、ラインアウトで痛恨のミスが出て逸機。5年前の番狂わせの再現はならなかった。

 リオのチームは勝つためにはこれしかないという、突き詰められたプレーを徹底して遂行し、成功させた。ラインアウトからのトライの時も、乱れそうになるのを踏ん張ってパスを繋いでいる。勝敗を直接左右するような局面をものにする勝負強さにおいて5年前のチームとの大きな差を見せつけられた初戦だった。

 続く英国戦はキックオフだけでなく攻守の全ての局面で完敗だった。蜂のように機敏に動き動き回るラグビーを標榜していたはずなのに、たまにボールを持っても前に出る勢いがなく、外国出身選手が目の前の相手を力尽くでかわそうとする攻めに終始した。リオの予選ラウンドでは19-21の惜敗。それが5年間で0-34まで差は開いた。

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唯一の勝利は韓国戦のみ…