俳優、脚本家の佐藤二朗さん
俳優、脚本家の佐藤二朗さん
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 個性派俳優・佐藤二朗さんが日々の生活や仕事で感じているジローイズムをお届けします。今回は、人から影響を受けたり、何かに感化されたりすることについて。

【写真】愛されキャラのこの人の口調を想像…

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 私ね、中学生や高校生の時ね、授業でね、板書するでしょ、板書。いま板書って言わないのかな。要するに先生が黒板に書いた字をね、生徒がノートに書き写すことね。それを板書っていうんだけどね、その板書をするとね、必ず僕はね、先生の字の「影響」を受けたのね。モロに受けたのね。どういうことかと言うとね、たとえば先生が黒板に書く字がカクカクした字なら自分がノートに書く字もカクカクになるし、丸っこい字なら自分の字も丸っこい字になるのね。あ、ごめんなさいね、どうしても心配だから言っときますとね、「カクカク」と「書く」をかけたわけではないからね今。これは言っときますね。自分の尊厳のためにもこれは言っときます。なんの話だっけね。あ、そうそう。とにかくそうなのね。ホントにね、先生の字のね、影響をモロに受けたんです、私。

 ノッケからなんの話だとお思いだろうし、自分のなかではマギー司郎さんの口調で書き始めたつもりだったが最後まで持ちそうにないし何より効果があまりに未知数ゆえ普通の口調に戻すが、要するに、僕は昔から、人の「影響」を受けやすいということなんです。

 字に限らず、人にああ言われたからああかな、そう言われたからそうかな、人がああやったからああやろう、こうやったからこうやろう。親や先生などの大人はもちろんのこと、同級生や先輩や後輩に、さらにはテレビで見たあの人この人に、近所のおじさんおばさんに、とにかくすぐ影響を受けちゃうんです。

 これ、昔はイヤでした。自分の中の、イヤな部分でした。なんか、自分がないみたいというか、没個性って感じがしたんですね。

 ただ、現在僕の仕事になっている俳優として考えても、やはり今まで僕は、本当に数多の俳優、作品に影響を受けてきました。

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譲れぬものさえ影響をうけてもいい