そして、今まで出会った、僕を見出だしてくれたり、今も一緒に作品を創るクリエイターたちは、それぞれがそれぞれの視点で、ホントにこの人は、いったい僕の何を見て、この役にしたんだろうと思うくらい、それぞれがそれぞれに僕が思ってもみなかった僕の部分を引き出してくれます。どう考えても、僕には見えないものが彼らには見えてるとしか思えない。そのクリエイターたちが僕を面白がってくれるのが凄く嬉しいと同時に、僕もそんなクリエイターたちが凄く面白いと感じられて、信じられて、彼らに「影響」を受けたいし、実際に受けることができるから、一緒に作品を創ることができると思うんです。
だから、昔は自分のイヤな部分だったんですが、今はこう思ってます。どんどん人から影響を受けていこう、どんどん感化されていこう、人のモノマネをしたっていいし、自分の考えが、人の考えを聞いて変遷したってエエやないか。
無論、「譲れぬもの」があってよしだが、その譲れぬもの以外は、なんというか、ふにゃ~ん、ぽにょ~んでヘラヘラしててもいいではないか。あのね、もっと言えばね、そのね、「譲れぬもの」でさえね、人の影響を受けてね、変遷をね、したっていいと思うわけね。
突然マギー司郎氏が復活したわけだが、とにかく、自分だけで強引にゴールを決める(局面もあるだろうが)のではなく、人に影響を受け、時には与え、他者との影響交換大市場で誰かがゴールを決める方が愉しいでないの。
ま、ただし、人に影響を受けた結果が凶と出ても、責任は自分。どんな人からどんな言葉やどんな動きでどんな「影響」を受け、どう自分に落とし込むかは自分次第。責任所在地は、あくまで自分。その覚悟をひっさげて、人から影響受けるの大好き。その影響で変わっちゃう自分はもっと大好き。
なんだよ結局、自分大好き人間なんじゃねえかとなったところで、人から貰う、人に渡す、そんな影響循環が愉しいと感じる52歳の夏なのです。
■佐藤二朗(さとう・じろう)/1969年、愛知県生まれ。俳優、脚本家。ドラマ「勇者ヨシヒコ」シリーズの仏役や「幼獣マメシバ」シリーズで芝二郎役など個性的な役で人気を集める。ツイッターの投稿をまとめた著書『のれんをくぐると、佐藤二朗』(山下書店)のほか、96年に旗揚げした演劇ユニット「ちからわざ」では脚本・出演を手がける。原作・脚本・監督の映画「はるヲうるひと」(主演・山田孝之)が全国公開中。