それに対して、菅首相や政府の幹部たちは、東京五輪が開催されて、毎日、世界中から派遣されたアスリートたちが真剣勝負の熱戦を繰り広げる、そして、日本選手がどんどん金メダルを獲得すれば、国民の東京五輪に対する捉え方は大きく変わり、開催してよかった、と認めるようになるのではないか、と期待していたのである。

 だが、7月28日に、東京都の新型コロナ新規感染者は3177人と急増した。国内感染者は9583人。27日の7629人から一気に2千人近く増加した。東京に緊急事態宣言が発令されて2週間が経って、政府の幹部たちは当然感染者が減る、と捉えていたのである。

 増加の理由は、感染力が強いデルタ株が主流になったのと、人出が減らなくなったことだと、専門家たちは指摘している。問題は、政府が感染を抑止する具体的方策を持っていないことで、どこまで感染が拡大するのか見当がつかないことだ。結局はワクチン頼みだが、ワクチンの接種率が60%以上の英国でも、感染は拡大している。新型コロナに対しどう取り組むのか。政府も国民も、このかつてないパンデミックに真正面から全力で対応するしかない。

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数

週刊朝日  2021年8月13日号

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