新型コロナウイルスの感染が急増する地域では、入院は重症患者や重症化リスクの高い患者に絞る――菅義偉首相が打ち出した「入院制限」方針が大きな波紋を呼んでいる。4日、東京都の新規感染者は4166人と、先月31日以来過去最多を更新。患者が急増しているなか、重症以外の患者が自宅療養することは可能なのだろうか。専門医に聞いた。
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「血中酸素濃度が正常な人でも、数日経つと酸素濃度が低下することは珍しくありません。入院していれば、速やかにレムデシビル、デキサメタゾンなどの投薬治療をして重症化を防ぐことができます。こうした中等症以下のうちにできる治療が遅れてしまうことが懸念されます」
自宅療養におけるリスクを、日本感染症学会の指導医でもある東京歯科大学市川総合病院の寺嶋毅教授(呼吸器内科)はこう指摘する。
寺嶋教授は、ここ1、2週間で入院のハードルが上がっているのを現場で実感しているという。
「保健所から、酸素濃度が低下した中等症2の受け入れ要請が増え、軽症が減ってきています。1カ月前は、軽症で熱が長く続いている人や、糖尿病・高血圧などの基礎疾患をもつ重症化リスクのある人が入院していましたが、感染者数の増加に伴い、すでに入院の基準は上がっている。医療現場の緊張感も高まっています」(寺嶋教授、以下同)
3日の閣議後会見で、田村憲久厚生労働相は「場合によっては在宅で酸素吸入することもありえる」との認識を示唆していた。自宅療養患者が酸素吸入することは可能なのだろうか。
「これまでにも、医師の判断のもと、慢性的に肺の病気がある患者は在宅酸素療法を使用してきました。ただ、速やかに導入できる環境を整えられるかどうかが疑問です。コロナ患者の自宅に、医療機器メーカーが酸素ボンベを配給したり、スタッフが中に入って説明を直にしたりできるのか。課題は多いと思います」
熱が続き、食欲が低下している中で、さらに自分で酸素吸入を行う――。孤独と急変への不安がこみあげることも想像がつく。