菅義偉首相は、2日の関係閣僚会議で「症状が悪くなればすぐに入院できる体制を整備」するとともに、オンライン診療を拡充する方針も示した。オンライン診療で重症化はどの程度防げるのだろうか。
「医療を受ける側と提供する側が、すぐにオンライン診療を使える状況にあるかどうかにもよりますが、電話よりはオンラインのほうが、患者の顔色が見られるという点でのメリットはあるかと思います。ただ、現状は、24時間にわたって脈拍と酸素濃度をモニター観測し、毎日の検温や回診によって医師と看護師が慎重に様子を診ることで、早期治療による重症化を防いでいます。その意味で、オンライン診療で可能な範囲は限定的になるかと思います」
さらに、菅首相は重症化リスクを7割減らすとされる新薬「抗体カクテル療法」を在宅患者に進める方針も示した。現状この新薬を使用できるのは酸素投与を行っていない入院患者(つまり中等症1以下)に限られ、対象医療機関に配分される仕組みになっており、クリニックなどでは受けられない。
「新薬の適用対象者は、酸素吸入を必要としていない軽症から中等症1までで、50歳以上の重症化リスクを有する人になります。現状、入院患者の重症度と発症からの日数を鑑みても、この薬の効果を生かせる状況にない部分もあります。発症から7日以内に適用される点滴投与の薬ですが、申請してから3日以内に医療機関に届くものです。そもそも、この薬の利点は入院を防ぐことにあるので、対象者に効率よく治療を進めるためには、入院しなくても点滴投与できる病院を設けるなどして、薬の良さを上手く利用する環境整備が必要だと思います」(寺嶋教授)
感染が急拡大する背景には、デルタ株の強い感染力がある。アメリカのCDC(疾病対策センター)がまとめた内部文書に「水ぼうそう」に匹敵するという記述があると、一部で報道されている。
「水ぼうそうは空気感染で、1人が8、9人に感染させます。密で換気の悪い場所は、これまで以上に警戒を強めた方がいいでしょう。7月下旬に米マサチューセッツ州で発生したクラスターでは、感染者の4分の3がワクチン接種を済ませた人で、大半がデルタ株でした。ワクチンによって重症化は抑えられても、ワクチン接種済みでも感染して他の人に広げてしまうことがありうるということが示唆されました」(寺嶋教授)
感染のピークが見えないいま、「自宅療養」を基本とする方針で国民の命を守れるのか。課題は山積している。
(AERA dot.編集部 岩下明日香)