「人体の構造には、根源的なひとつの“パターン”といえるものが備わっている」
この「パターン」を三木先生は「おもかげ」とも「原形」とも表現します。この原形はヒトが進化する過程で育まれてきたものです。
そして解剖学といった人体の構造の解明には二つの方向性があるといいます。
「その一つは、構造のもつ『しくみ』を分析するまさに自然科学の方向であり、他の一つは構造のもつ『かたち』を体得するいわば自然哲学の方向である」
三木先生は「しくみ」の分析よりも「かたち」の体得こそが重要だと説きます。そして「かたち」を体得するとは「おもかげ」や「原形」を探求することなのです。
姿勢のよさを「しくみ」でとらえれば、先に述べたように「重力に対する体の負担が最小限」であることです。一方で「かたち」でとらえれば、「原形やおもかげがしっかり維持されている」ということなのでしょう。そういう姿勢は本来のヒトの姿であり、まず見た目が美しいのではないでしょうか。
歳を重ねても、ヒトとしての原形を失わないようにしたいものです。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2021年8月13日号