新型コロナウイルスが感染爆発を起こすなかで開催された東京オリンピックが、8月8日に閉幕した。閉会式でスピーチした国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長は「全ての選手を代表してお伝えします。ありがとう、東京。ありがとう、日本」と述べた。日本選手団は金27個を含む計58個のメダルを獲得。いずれも史上最多で、ホスト国として「大成功」と評価される結果となった。
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頑張ったのは選手だけではない。五輪取材を通して、どの会場でも大会の運営に関わったボランティアの献身的な働きが目を引いた。連日のように真夏日を記録する酷暑の中で、文字通り大量の汗を流しながら仕事をこなしていた。
選手からもボランティアへの称賛の声が相次いだ。
大会を陰で支えてくれた人たちに、カヌーの女子スラローム・カナディアンシングルで金メダルを獲得したジェシカ・フォックス選手(オーストラリア)はTikTokで、「日本のボランティアはただただ最高。Arigato」と投稿。
男子スラローム・カヤックシングル3位のハネス・アイグナー選手(ドイツ)も表彰式の後、副賞として受け取ったブーケを大会ボランティアの女性に贈った。アイグナー選手は、ドイツ公共放送(ZDF)のインタビューに「みずから進んで仕事をして、暑い中で立っているボランティアの人たちを本当にリスペクトしています」と語った。
だが、輝かしいことばかりが強調される裏には、あまり知られていない事実もある。
開会式では、スタッフ向けの弁当約4千食が廃棄されていたことが問題になった。無観客開催になり、必要とされる弁当の量が減ったことが原因とされているが、開会式に参加したボランティアの一人は「別の理由もあった」と指摘する。
「弁当がおいしくないんです。お総菜はスパゲティの上にコロッケと少しのお肉。それにパンかおにぎりを選べるんですけど、炭水化物ばかり。ひどいものでした」
それでも、全員が同じ食事をしているなら文句は言えないかもしれない。ところが、各競技場にはIOCや競技団体の幹部らが利用できるVIP用のラウンジが準備されていた。
柔道の会場となった日本武道館では、記者会見場の向かい側に設置されていて、中の様子が丸見えだった。店内は高級ホテルのラウンジのような雰囲気で、スーツ姿の男性が入場が許されたVIPに注文をたずねていた。メディア関係者が店内に入ることは許されていないので料理の内容は確認できなかったが、壁際に置かれていたビュッフェ用の料理は、炭水化物だらけのお総菜には見えなかった。