大会幹部による目を疑うような「ルール違反」にも出くわした。

 8月5日に幕張メッセで行われたレスリング女子57キロ級決勝では、川井梨紗子選手が2大会連続金メダルの偉業を達成した。前日には、妹の友香子選手が女子63キロ級で優勝、夏季五輪では日本人選手初となる「姉妹金メダル」となった。

 梨紗子選手が決勝に挑んだ日の観客席は、大会組織委員会や日本オリンピック委員会(JOC)の幹部ら10人以上が集まって観戦していた。すると、勝利後に大きな声を出して「万歳三唱」を始めたのだ。

 声を出しての応援は、大会関係者の感染症対策を定めた「プレイブック」で禁じられている。競技場で万歳三唱を目撃したボランティアスタッフやメディア関係者からは、「あの人たちは何をやってるんだ」「プレイブック違反じゃないか」という声が聞こえた。

 ボランティアスタッフは、観客席での感染症対策にいつも苦労していた。観客席でマスクを外している人を見かけると「マスクをしてください」と声をかける。集団になって席に座っている人がいれば、移動をうながす。英語も日本語も通じない外国人に頭を下げてお願いするシーンは、大会期間中に何度も見かけた。

 8日に静岡県伊豆市で実施された自転車トラック競技の女子オムニアムでは、金メダルが期待されていた梶原悠未選手が最終レースの残り9周で落車。数少ない有観客での開催だったが、大きな声を出すことが禁じられている中で、観客やボランティアスタッフ、メディア関係者は拍手で梶原選手を励ました。再び乗車してレースに復帰した梶原選手は、銀メダルを獲得。梶原選手は試合後、「苦しい時に拍手がすごく聞こえて、私の背中を押して追い風になってくれた」と話した。

 コロナ禍の五輪は、参加するすべての人たちが苦労を重ねながら運営されていた。ところが、組織委やJOCの幹部は自らルール破りをしていた。感染拡大防止に力を尽くしている選手、ボランティアへの敬意が欠けた行為だった。

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万全とはいえないワクチン接種