こういう場合、海外だと大規模な街頭デモが起きますが、日本では限定的でした。一方で、市民の鬱屈(うっくつ)は匿名のSNSやネットのコメント欄に色濃く表れました。このトレンドはスポンサー企業も把握しています。開会式への参加見送りなどの動きは、企業のリスクマネジメントの観点から、当然だったといえます。

「安全・安心」を強調しながら開催に突き進んだ東京五輪で、私たちは大切なものを失いました。政治や行政に対する信頼です。危惧するのは科学の信頼失墜です。ワクチンに関するデマを信じる若者も少なくありません。政権が代わっても不信は根強く残るでしょう。

 これから先、ワクチンの効かない変異株が出現したり、別の感染症のパンデミックが起きたりしたとき、国民に協力を求め行動の制御や自粛を求めるのが一層困難になるでしょう。市民の側も単に批判するだけでなく、政治や行政に働きかける対話力を磨く必要があります。

(構成/編集部・渡辺豪)

AERA 2021年8月16日-8月23日合併号

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