「『できないから』という理由だけでなく、大々的な葬儀をしなくても故人をしのぶことができることに多くの人が気付いたのだと思います。葬儀についてはコロナ後も間違いなく簡素化が進む。有名人においてもそうでしょう。今後は、田村さんのように『死去の発表は1カ月以上経ってから』というケースが一般的になるかもしれません」(同)

 フリーの編集者で、今は亡き大御所漫画家とも交流があった吉備能人さん(53)は「相続の問題が終わるまでは、亡くなったことを伏せておきたいという遺族の意向もあるのではないでしょうか。スムーズな相続を妨げる人たちが出てくる可能性がありますから」と指摘する。

 小林さんの件では、葬儀に呼ばれなかった絶縁8年の息子と遺産トラブルが生じるのではないかとの記事も出ている。

■死ぬまで現役ではない

「俳優のリタイア」に着目するのは、医師で作家の米山公啓さん(69)だ。

 田村さんは、2018年2月に放送された「眠狂四郎 The Final」に出演したのを最後に、表舞台には一切現れなくなった。週刊誌の報道によると、同年4月、記者が田村さんに芸能界引退について尋ねたところ、「自分の中で、もう辞めてもいいかなと思ったんだよ。自分としてはもう十分にやったなと」と答えたという。

「死ぬまで現役で、ではなく、俳優であっても、ある年代を超えると活躍の場から身を引くのが認められるようになってきた。となれば、死は個人的な問題ですから、遺族が落ち着いてからの発表で十分です。偲ぶ会などは、有志が別途行えばいいのですから」(米山さん)

 コロナによって変化し、コロナ後も元に戻らなさそうなものは多い。「死」にまつわるあれこれも、その一つかもしれない。(ライター・羽根田真智)

AERA 2021年8月16日号-8月23日合併号