ただ動きをそろえるだけではなく、常に高いレベルを目指すところがASの厳しさだ。特に8人で泳ぐチームでは、体格や泳力の違いがある中で妥協なく上を目指して演技を作り上げていく。井村コーチは著書の中で「レベルは中間ではなく、トップに合わせる」という方針を述べている。トップの力量を持つ選手に対して、手加減して泳ぐことを求めることはできないという考えからだ。
「チームは、全員が上を目指して全力を尽くしているときにこそ最も大きな力を発揮するものだと思います。一人でも目線が違う選手がいたら、チーム全体の士気にも影響を与えることになります」
「チーム全体のレベルは、トップを基準に合わせるように挑戦させ続けます。しいて合わせるとすれば、個人個人が『限界まで頑張る』『100パーセント以上の力を発揮しようとする』というところで合わせるのです」(『愛があるなら叱りなさい』(井村雅代著、幻冬舎刊))
新体操やASの数分で終わる演技の中には、選手たちがすべてをかけて積んできた鍛錬が詰まっている。(文・沢田聡子)
●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」