物語の中盤では、悩む和合さんの前に光り輝く「デコトラ」が登場。歌手・布袋寅泰が荷台に乗って登場し、この開会式のために書き下ろした「TSUBASA」と「HIKARI」の2曲を、全盲ギタリストの田川ヒロアキ、車いすギタリストの川崎昭仁、不登校を経験した笑顔が魅力の17歳ベーシスト・アヤコノさんと共に演奏し、ダンサーが踊りだす。

 勇気づけられた和合さんは約20メートルの滑走路を車いすで走り、無事に飛び立った。一連の物語は、困難を乗り越えて戦いに臨むアスリートたちの姿が重ねられている。

「五輪の開会式は視聴者が置いてきぼりになった感がありました。詰め込みすぎて何を表現したいのかわからなかった。せっかく大竹しのぶさんなど表現力がある女優が出演したのにもったいないように感じました。パラリンピックの開会式は一貫性のある演出で制作スタッフの強い思いが伝わってきました」(テレビ関係者)

 五輪の開会式でバッハ会長が13分に及ぶ挨拶で、「長い」とヒンシュクを買ったが、パラリンピックの開会式では国際パラリンピック委員会(IPC)のアンドリュー・パーソンズ会長の挨拶は6分半あまり。

「ここまで来られたことに信じられない気持ちです。多くの人がこの日が来るのは不可能だと考えていました。それでも多くの人々のおかげで、地球上で最も大きな変革を起こす力のスポーツの祭典が、いま始まろうとしている」

「パラリンピックは、単に観戦する楽しみにとどまらず、地球上の他のスポーツイベントとは異なり、社会を変革する力を持っています」と身振り手振りで訴えかけた。日本語で「ありがとうジャパン、ありがとう東京!」と感謝する場面もあり、多くの視聴者の心をつかんだ。

「挨拶一つとっても五輪への思い、熱意は伝わってきます。バッハ会長とパーソンズ会長は対照的でした」

 スポーツ紙五輪担当記者は五輪とパラリンピック開会式についてこう振り返る。

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忖度ばかりでは響かない