90年代に入ると女子プロレス団体LLPWで秒殺試合が行われた。当初、北斗の対戦予定はハーレー斉藤だったが怪我で欠場。対戦相手「X」のまま特別試合が組まれたことに試合前からストレスを溜めているようだった。
「ハーレーが出られないんだったらな、社長の風間(ルミ)がくればいいんだよ」(北斗)
ヤンキーキャラの紅はリングインすると北斗の顔面にツバを吐きかけた。
「自分が紅夜叉だ。天下を取りにやってきたぜ」(紅)
ゴングとともに紅は木刀攻撃を仕掛け、リング上へ北斗を叩きつけるがダメージを与えられない。目潰し、コーナーからのチョークスラムと攻め続けるも形勢逆転され、2分17秒(137秒)ノーザンライトボム1発で試合は終わった。
「ああ笑わせてもらったよ、久しぶりに。(技は1つしか出さなかったのは)可哀想なんじゃないの、知らないけど。(最後は社長出てこいと)舐めやがって、タダじゃおかねえぞ風間。人のこと舐めんのもいい加減にしろ」(北斗)
試合後も怒りのコメントを発していたが、この時にインタビュアーが秒殺という言葉を使っていたのが興味深い。パンクラス旗揚げ前のことであった。
●2000年3月26日:全日本/大森隆男vs秋山準(愛知県体育館)
全日本、春の風物詩「チャンピオン・カーニバル」1回戦はゴング前から見せ場が続出した。後から入場した秋山のリングインを狙った大森のドロップキックは不発、逆にジャンピングニーパッドを食らってしまう。しかし立ち上がった大森はレフェリーを秋山にぶつけると、必殺技のアックスボンバーを早くも叩き込んだ。ここで正式にゴングが鳴ると背後から左、そして正面から右のアックスボンバーを繰り出し3カウントを奪った。大森がTシャツを脱ぐ前に決着した試合の正式タイムは7秒だった。
「ちょっと呆然ですよね、秋山も。カウントもあれでしょ、1は聞こえなかったのかもしれないですよね。カウント2だと思って返したのかもしれませんね。わからないですね、こういうのは。もう1発で終わりですからね」
解説を務めた三沢光晴さんもコメントに困るような試合決着だった。「王道」と言われ長時間試合が有名だった全日本では考えられないような結末。トーナメント形式となったチャンカン、優勝候補が意外な形で敗れた試合は今でも語り草だ。