で、『きのう何食べた?』ですが、自炊を中心とした「味覚」を軸に、西島さんと内野聖陽さん演じる40代ゲイカップルの日常を描いた心地良い作品(一昨年放送された連ドラ)でした。過度に深刻ぶったり卑屈になったりするでもなく、それでいてゲイが日々直面する「ノンケ社会」の悪意なき無神経さなんかも、とてもリズミカルにちりばめられており、いわゆる「ノーマル・ゲイ・ライフ」とは無縁の私でも大いに楽しめました。

 特に内野さん演じるオネエテイスト強めの「パートナー役」が秀逸で、いわゆる「オネエ系」の代名詞とも言える、脇閉め・内股・大振り・女言葉という設定に、最初は「またこのパターンか」とタカをくくっていたものの、回を追う毎に「昭和釜」特有のリアリティがじわじわと染みてきて、実に繊細な役作りがなされていると感服するばかり。考えてみれば、現実世界のゲイやオカマもみんな何かしらの「役」を演じているのかもしれません。男を演じ、女を演じ、そして「ゲイっぽさ」や「オカマらしさ」を演じ……。その難儀で健気な「ゲイの機微」がしっかりと表現された作品。観て良かった。若さという自意識だけを武器にダラダラ生きている三十路ゲイ役の磯村勇斗くんの絶妙な小汚さも素晴らしかった。

 それはそうと、問答無用で「ゲイ認定」されてしまう私のパソコン。心底お恥ずかしい限りです。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2021年9月10日号

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