だが、ここには一つの誤算があった。若者たちは、若いタレントが出てさえいればその番組を見るというわけではない。単に自分たちの感性で面白いと思うものを見ている。千鳥やサンドウィッチマンは圧倒的に面白いからこそ若者を含む幅広い層に支持されている。かまいたちやチョコレートプラネットも同様だ。

 第7世代のブームが過ぎたからといって、その世代の芸人全員がテレビの世界からお払い箱になるわけではない。霜降り明星、EXIT、フワちゃんのように、若い世代に共感されるような感覚を持ち合わせた上で、純粋に実力があって面白い人はちゃんと生き残っている。

 一方、面白いかどうかという点を突き詰めた結果として、芸歴が長く、経験豊富で実力もある第6世代の芸人が、続々と台頭しているのだ。

 第6世代の芸人は、だいたい40歳前後である。この世代の人は若者に支持されるだけではなく、同世代の視聴者からは共感されるし、大人の余裕があるので上の世代からも嫌われにくい。

 第6世代の芸人がこれだけ華々しく活躍しているのは、彼らが今のテレビに最も必要とされる人材だからだ。下の世代に面白がられ、同世代に共感され、上の世代からも信頼される。不遇な時期も長かったこの世代の芸人が、ようやく真価を発揮するときが来た。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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