■バブルの温床、過剰流動性

 バブルは、資金が余剰となり、資金保有者が投資先を探している状態のときに発生しやすいことは歴史が証明しています。

“バブル”という言葉の語源となり、ニュートンも損失を被った1720年のサウス・オーシャン株の急騰は、イギリスにおける中産階級の成立と資金余剰が背景にありましたし、1980年代の日本のバブル経済はプラザ合意以降の日銀による過剰流動性の供給がもたらした、というのが定説です。

 そして現在、日本においても資金の余剰が起きています。

 コロナ禍で抑制された民間消費が11.7兆円あり、1人当たり10万円の定額給付金もその大半は使われないまま家計に眠っており、日本における家計の過剰貯蓄は25兆円程度にも膨れ上がっています。

 アメリカの個人の資金余剰はさらに巨額で、2兆ドル(210兆円)も平時より上振れしていると言われています。

■活況は当面続く?!

 現状、株価を始めとする資産価格は全般的に高い水準にありますが、懸念材料はこうした上昇の元になっている米国FRBの金融緩和が縮小されるかもしれないという観測です。いわゆる「テーパリング(金融緩和の縮小)」です。

 金融緩和政策が修正され、金利が上昇し潤沢な市場への資金供給が細ると、これらの恩恵を受けてきたハイテク産業などの成長(グロース)株や金や暗号資産(仮想通貨)などの価格が下落するとの懸念が市場にあります。

 その意味で、8月27日に開催されたジャクソンホール会議(FRB議長をはじめとした各国の中央銀行総裁などの要人が集まる金融・経済シンポジウム)でパウエルFRB議長がどのような発言をするのに注目が集まりましたが、同氏の講演内容はハト派的でした。すなわち、議長は、雇用の回復状況を評価する一方、新型コロナウイルスのデルタ株の広がりを警戒するなど、プラスマイナス両方に言及し、テーパリング開始時期については年内が適切との見方を示しながらも、具体的な時期については明言を避け、「金融正常化を焦ってない」というメッセージを市場に送ったのです。

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さらに株価や資源価格は上昇する可能性も