立憲民主党が衆議院選挙に向けた公約第1弾を発表した。いち早い発表の背景には、自民党総裁選に埋没する危機感のほか、共産党との共闘が進んでいることがある。AERA 2021年9月20日号の記事を紹介する。
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首相の首がすげ替わっても、自民党には絶対にできないことがある──。9月7日、立憲民主党の枝野幸男代表が衆議院選挙で政権を獲得した場合、初閣議で決定して直ちに取り組む政策を発表した。いずれもこの10年の「安倍・菅」政権で実現できなかったメニューが並ぶ。
例えば、新型コロナウイルス対策として30兆円規模の補正予算の編成。官房長官を司令塔にした新たな感染症対策の部署の新設。「モリ・カケ・サクラ」問題の再調査、入管施設で亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33)の入管施設内の映像開示。そして、菅政権によって任命拒否された日本学術会議の会員6人の任命などだ。
■二者択一の環境整える
これまで解散総選挙に先駆けて「影の内閣」を発表し、政権交代後の政治の有りようを有権者に「人事」で示す政治方法はあった。しかし、具体的な政策として何がどう変わるのか。この発表は「初閣議で即日、決定できる」趣旨のもので、例えば、立憲民主党が政権公約の目玉にしている「選択的夫婦別姓の実現」など国会質疑に時間を要するものは入っていない。つまり、政権交代の翌日からどのような変化が起きるのか、という点に重点が置かれている。今回の発表は政治のダイナミズムを具体的に見せた格好だ。
会見で枝野代表は、これまで消極的だった「政権交代」というワードを明言。2010年代には自民党か立憲民主党か、2大政党が政権を競い合う構造が作れてこなかったと釈明した上で、ようやく「自民党か立憲民主党か」という二者択一の選択をできる環境を整えることができたと語った。新立憲民主党として衆院定数の単独過半数にあたる233人以上の候補者を全国で擁立できる見通しが立ったこと。また共産党などとの野党共闘が一定程度、調整できたことも、この発言の背景にある。