A.a菌は歯周病の中でも特に悪性度の高い菌の一つです。A.a菌は歯周ポケットの内部に入り込んだ後、急速に増加するという特徴を持ちます。歯をかなりていねいに磨いても、歯周病が進行しやすくなってしまうといわれ、この菌が口の中にいる患者さんのうち、15%くらいの人がその後、重症の歯周病に進行します。また、歯周病の中には10~30代で発症し、急激に進行するタイプの歯周病があります。かつては、重度進行性歯周炎、若年性歯周炎などと呼ばれていたものですが、このタイプの歯周病の原因菌としてA.a菌が知られているのです。

歯周病菌。様々な疾患とのかかわりが明らかに ※写真はイメージです(c)Getty Images
歯周病菌。様々な疾患とのかかわりが明らかに ※写真はイメージです(c)Getty Images

 この研究では歯周病菌がどのように食道がんを発生させるのか、詳しいメカニズムについては明らかにされていません。今後の研究課題となると思われますが、つくづく、歯周病菌というのはたちが悪い菌だと実感します。

 すでに糖尿病、動脈硬化、早産、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、認知症などさまざまな病気とのかかわりが指摘されていますが、今後もさまざまな疾患とのかかわりが明らかになってくるのではないでしょうか。

■A.a菌の有無を検査し、抗菌療法を

 さて、A.a菌が見つかった場合、歯周病重症化の予防対策としても、食道がん対策としても、できるだけ菌を取り除き、口の中をきれいにすることが大事になってくると思われます。

 A.a菌が口の中にいるかどうかは、歯科でわかります。この研究と同様に、口の中のプラークを採取し、検査機器で調べます。重度の歯周病や治りにくい歯周病の患者さんでA.a菌が見つかった場合、抗菌療法をおこなうのが一般的です。

 抗菌療法はテトラサイクリン系抗菌薬やマクロライド系抗菌薬などの抗菌剤で原因菌を死滅させる方法で、飲み薬として服用してもらう方法や、歯と歯ぐきの隙間に投与する方法があります。心配な人は一度、相談してみるといいでしょう。治療対象外である場合、自費で検査を受けることができます。

 なお、冒頭でも申し上げたように食道がん対策としてはお酒の飲みすぎ、たばこに注意が必要ですが、この二つは歯周病にも深くかかわっています。

 たばこは成分のニコチンに血管を収縮させる働きがあり、歯ぐきの血流も悪くなるため、歯周病が悪化しやすいことが知られています。また、歯周病があると歯科で治療をしても治りにくいことがわかっています。

 お酒については、飲んだ後、酔っぱらって寝てしまうなどして、歯みがきをしない人が意外と多いのです。

 しかし、アルコールには糖質が含まれています。中でも醸造酒のワインや日本酒は糖質が多く、歯みがきをしなければ、むし歯や歯周病の原因になります。

「アルコール消毒だ」などと言って、豪快に飲んでいる人もいるようですが、十分に注意してください。

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