──麻生久美子さんとの初共演はいかがでしたか。

 初対面がダンス教室だったので、共演者ではあるんですが、ダンスの先輩という関係から始まりました。華奢な方ですけど、芯がしっかりしていて、信頼と安心をすごく感じさせてくれる方ですね。

──コロナ禍での撮影は、かなり気を使われたのでは?

 共演者やスタッフ、エキストラの皆さんも含めて、思いやりのベクトルをそれまで以上に多めに持っていてくれたなあ、というのは、今、思い返しても、うん、ありますね。

──前作DVDのオーディオコメンタリーでは、新田がホテルに着任して早々、理容室で身なりを整えさせられるところが観客に受けていた、という話をされていました。

 今回も脚本には理容室に行くシーンがあって、新田は拒否することになっていたんです。でも、「この期に及んで拒否るのはおかしいよね、ちょっと変えるね」って、鈴木監督に相談して演じたら、「そういうことね、オッケー」と言ってくれて。監督は、おおまかな作戦は立てるけど、「一挙手一投足、間違えるんじゃねぇよ」とすべてを操るのではなく、俳優の考えを尊重してくれる。演技のアイデアが出しやすかったですね。

■待っててくれてるんだ

──テレビドラマ「教場」「グランメゾン東京」で俳優としての存在感を示しつつ、昨年1月からシンガーとしても活躍中です。初アルバム「Go with the Flow」と、東京と大阪でのライブツアーは印象的でした。音楽とはどう向き合っていきたいですか。

 マイクを持つことにすごく距離を取っていたし、やるとはまったく思っていなかった。なんだけど、周囲のアーティストの方たちが「なんでやらないの?」と言ってくれたんです。それも押しつけるのではなく、みんながマイクを差し出す感じで。

 あの頃はInstagramもまだやっていなくて、中国のウェイボーでやってたんですけど、そこでもたくさんのファンが待っててくれた。皆さんの気持ちを文字として目視したとき、ようやく「そっか、待っててくれてるんだ」っていうのを自覚できて。それで、初めてマイクを持てたかな、という感じです。

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