さて、初当選から一貫して高市早苗氏は、根っからの「叩き上げ」「荒くれ者」感に満ちていました。自分の政策にケチをつけたがる同期の野田聖子がウロウロしようと、「女帝」の名を最初に勝ち取った小池百合子が緑色の服を着て流行語大賞を獲ろうと、聖子ちゃんカットの片山さつきがガーガーとしゃしゃり出てこようと、三原じゅん子が24時間メンチ切ってこようと、女全開の稲田朋美が「靖国参拝」でポジション捕りを仕掛けてこようと、早苗は決して焦らず、動揺せず、巧みに使い分ける関西弁のノリを武器に、「超保守的で分別とユーモアのある荒くれ者」として綽々(しゃくしゃく)と君臨してきたのです。40オーバーのオカマは、皆ちゃんと貴女を見ていましたよ。
彼女の最大の強みは、あの「顔力」でしょう。ミサイルのひとつやふたつであれば飲み込んでしまいそうな重厚感。彼女の顔の奥には、常に「信念」という名の表情筋が存在しています。それは相当な自制心によって培われた筋肉です。女の戦いというのは己との戦い。
早苗×聖子×百合子。93年組の戦争はまだまだこれからです。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2021年9月24日号