「現金化をすることで苦しくなるのは韓国です。日本が輸出規制強化などの経済制裁を行えば、韓国のメーカーは大打撃を受ける。日本が半導体素材の輸出規制を強めてから2年が経過したが、文在寅大統領が呼びかけた半導体の素材や部品などの国産化は一部にとどまっている。日本の経済制裁は韓国経済の死活問題にかかわる事態なので、これ以上は対立を避けたいというのが韓国政府の本音でしょう」
ただ、文大統領はこの問題に対して腰が重い。韓国国内で来年3月に大統領選が行われるが、与党「共に民主党」で京畿道知事の李在明(イ・ジェミョン)候補は日本に対して文大統領より強硬な姿勢であることで知られる。一方、国民からの人気が高い野党「国民の力」で前検察総長の尹錫悦(ユン・ソギョル)候補は日本に対して言及することが少ない。
「李候補は慰安婦問題を巡る日韓合意について『破棄して再交渉すべき』と主張しています。三菱重工業の資産差し押さえについても強硬なスタンスでしょう。尹候補は日韓関係の改善に前向きな姿勢を示しているが、実際に大統領になった時、政治手腕が未知数なので不透明です」(韓国駐在の通信員)
現金化が行われれば、日韓関係はさらに悪化する。後戻りのできない状況まで突き進んでしまうのだろうか。(牧忠則)