麻生:もう! 何だったんですか、あれは! 結構傷つきましたよ。現場に入る前もオダギリさんからプレッシャーをかけられましたし。オダギリさんとは、普段くだらないことばかり話しているので楽しいんですけど、監督としては厳しい。今回あった長ぜりふについて、不安な気持ちを正直に伝えたら、「セリフを間違えるとかないから」とか言われましたよね。
■どんどん痩せていって
オダギリ:セリフが入ってないのはプロ意識が足らない?
麻生:それそれ! すごくビビりました。他にも、「テストもしないから。一発本番でいくので」とか。オダギリさんだって一緒に芝居している時は、いつも完璧にセリフを言っているわけでもないのに、監督になったら、なぜいきなりそんなことを言い出すのかと(笑)。
オダギリ:半分は冗談です。でも「ある船頭の話」の時はテストをしないですぐ本番というスタイルだったんです。テストがない方がみんな緊張感を持ちますしね。麻生さんは俳優として能力が高いから、現場では僕も欲が出ちゃって、いろんなことを要求しちゃうんですよね。セリフの間とかニュアンスとかとにかく細かく伝えさせてもらったし、麻生さんは完璧に返してくれていましたよ。
麻生:よくそこまで役者に伝わるように言ってくれるなと思います。役者さんだからだと思うんですが、伝える方法、言葉をたくさん持っている。監督の言い方次第で、受け取る側も芝居が全然変わってきますから。でも、撮影中はとにかく大変そうで。どんどん痩せていくので心配だったんです。
オダギリ:ご飯を食べる余裕がないんですよ。現場にいる間は心配事が勝っちゃうんですね。次のシーンはきちんと準備されているかなとか、カット割りは成立しているのだろうかとか。コロナ対策もありました。みなさんに和気藹々で楽しくやっていただきたいと思いながらも、僕にその余裕はなかったですね。
麻生:着ぐるみで出演もされましたしね。オリバー役の犬メイクは質が高くて、着ぐるみとのバランスが絶妙でした。私は見どころの一つだと思っています。オリバーのおっさんキャラクターも含めて好きでした。