(c)MINAMATA FILM,LLC
(c)MINAMATA FILM,LLC

──撮影では、ユージンになりきり、実際に写真も撮っていたそうですね。レヴィタス監督が言うには、あなたの写真も素晴らしい出来だとか。

「写真はすごく好きで、巨匠から無名のカメラマンまで、いろいろ好きな写真家がいる。僕が好きな写真というのは、偶然素晴らしい瞬間をとらえたものだ。二度と戻ってこない瞬間を偶発的にとらえたもの。そんな写真を見ると興奮する。アクシデント、偶発性という側面が写真に惹かれる最大の理由だよ」

──映画をきっかけに、環境問題という、より大きな課題について世の関心を引くという願いがあったのですか?

「この映画の製作を考えるにあたり、その課題が重要になると考えた。この映画を見て、今の地球で起こっていることについて考える機会となればと。大きな宇宙の片隅にある、ミナマタの小さな漁村で起こった悲劇、少数である村民とカメラを持った一人の男にとって戦いがいかに過酷であったかを知ってもらいたい。これは起きてしまった仕方のない問題と言ってしまうのは簡単だが、人類の行き過ぎた行動を阻止するために、より多くの人の団結が必要であると感じる。一つの情熱に基づいた団結。その情熱とは、この地球に生存してもらいたいという願いだ。子供たちのため、未来の世代のために。人類は自然資源を搾取し、枯渇させた。貪欲さから。それを阻止しなければならないんだ」

──俳優という職業に対して、監督やフォトジャーナリストなどと同様、社会的、政治的責任を担っていると感じることはありますか?

「たぶん。僕が思うに、人類が非常に大きな問題に直面したとき、その巨大な問題を前に叫んだり、ぶつかったりしても解決できない。それよりも一人ひとりが可能な限り問題を理解し、取り組んでいくことが大切ではないかと思う。僕ら一人ひとりは小さい、一つのかけらでしかないかもしれないけれど、多くの『一人』が集まることで、巨大な問題が解決できるのでは、と」

(高野裕子=在ロンドン)

週刊朝日  2021年10月1日号

暮らしとモノ班 for promotion
疲労回復グッズの選び方は?実際に使ったマッサージ機のおすすめはコレ!