林:それってちょっとヤな感じですね(笑)。
岸部:芸能界と政界とをつなぐ象徴的な出来事ですよね。僕はまだ19かハタチぐらいでしたけどね。ザ・タイガースのメンバーも当時、京都や大阪から出てきた子どもたちですから、「政治家ってすごいな」「見たことあるな、あの人」って感じで、まるで「真夏の夜の夢」ですよ。
林:おもしろい話ですね。
岸部:ともかく、こういう映画をとっかかりにして、政治に関心を持つ人が少しでも増えてくれればいいですよね。
林:そうですね。私は、早く女性に総理大臣になってもらいたいと思っているんです。女性総理が誕生したら、日本はものすごく変わると思いますよ。早くその日が来ればいいなと思ってます。
岸部:そうですね。でも、いまのところ、日本ではなかなか難しいんじゃないでしょうか。やっぱり、いま上にいる長老の人たちが引退してからじゃないと、簡単に状況は変わらないんじゃないかと思います。
林:たしかに、そうかもしれませんね。ところで、話が変わりますけど、岸部さんの昔のインタビュー記事を読んだら「演技は勉強することでもない」とおっしゃっていたのが印象に残っています。そうなんですか。
岸部:僕は30歳ぐらいになってから、TBSの久世(光彦=プロデューサー)さんという人に俳優の道に進むことをすすめられて、樹木希林さんの事務所を紹介されたんです。そこで、面接を受けて入ったんですが、久世さんからも希林さんからも、早坂(暁)さんという脚本家の方からも「今から芝居の勉強はしないほうがいい」って言われたんです。
林:そうだったんですね。
岸部:だから、あえてというか、本格的に芝居の勉強はしたことがないんです。映画というものは、監督によって何を大事にするかがそれぞれ違うんですよね。僕みたいに、いわゆる芝居の基礎を学んでいない俳優は起用しない監督もいます。ちゃんとした芝居の技術を、体系的に学んだ俳優を好む監督もいれば、むしろそういう人ばかりでなく、いろんな背景を持つ俳優を好む監督もいるという感じですね。